2012/01/09

The Headless Hawk 3

It was a funhouse, a penny arcade, and jammed from wall to wall with Saturday splurgers.
 A crowd of kids, clapping in time to music, had formed a circle around two dancers.
These dancers were both girls. They rocked and stamped and rolled serious savage eyes.
Vincent's gaze traveled round the audience, and when he saw her a bright shiver went through him,
for something of the dance's violence was reflected in her face.
Standing there beside a tall ugly boy, it was as if she were the sleeper and the Dancers a dream.

そこは遊戯場、娯楽アーケードだ。 土曜日の客でごったがえしている。
若者の一団が音楽に合わせて手を叩きながら、ふたりのダンサーのまわりを取り囲んでいる。
ダンサーはふたりとも女の子だ。 身体を揺すったり、足を踏みならしたり、
きつく野性的な目をくるくるまわしたりする。
ヴィンセントは観衆をぐるっと見渡した。そしてあの女の子を見つけたとき、
ぞくっとするような震えがきた。 踊りの激しさが彼女の顔にも反映されていたからだ。
彼女は、背の高い、醜い顔の男の子と並んで立っている。
そうしているとまるで眠っている人間のようで、ダンサーたちは彼女の夢のなかの人間のようだった。


Though Vincent's instinct was to leave before she noticed, he advanced,
and lightly touched her shoulder. "Hello," he said.
Turning, she stared at him, and her eyes were clear-blank.
First terror, then puzzlement replaced the dead lost look.
" You remember me," he prompted, " the gallery ?  Your painting ? "

ヴィンセントは本能的に、彼女に気づかれないうちに立ち去ろうとしたが、思わず前に進み出てしまった。
そして、彼女の肩に軽く手を触れた。「やぁ」 と彼はいった。
彼女は振返ると彼を見つめたが、目がうつろだった。
生気のない無表情な顔に、はじめは恐怖が、次に当惑が見えた。
「僕のこと、憶えているね」 彼は促すようにいった。「画廊も? きみの絵のことも?」


机の上の、細く青いろうそくを立てた燭台には火がともっている。
部屋のなかは、ろうそくの幻想的は光に洗われ、ゆらめいている。
「グラス・ヒルを思い出すわ。 あのろうそくの光」 彼女は微笑んだ。
「私のお祖母ちゃん、グラス・ヒルに住んでいたの。
お祖母ちゃんがいつもよくいっていたことわかる? 
『ろうそくは魔法の杖。 ひとつともせば世の中はお話の本になる』」
「お祖母ちゃん、きっとあなたが好きになったわ。デストロネッリさんだって」

A candelabra of lean blue candles burned on a desk;
the room, washed in their delirious light, waved.
" It's like Glass Hill, the candlelight, she said, and smiled.
" My Granny lived at Glass Hill. Do you know what she used to say ? 
'Candles are magic wands; light one and the world is a story book.' "
" Granny would've loved you, even Mr.Destronelli. she said.

「デストロネッリ?」 前に聞いたことがある名前だった。
彼女はいたずらっぽく流し目をした。わたしたちのあいだにはごまかしはなし、
よく知り合っているんだからそんな必要はない、といってるような目つきだった。
「知ってるくせに」彼女は確信を持っていった。

" Destronelli ? It was a name he'd heard before.
Her eyes slid slyly sideways, and this look seemed to say:
There must be no subterfuge between us,
we who understand each other have no need of it.
" Oh, you know," she said with a conviction.

彼らの影がろうそくの光でさざ波のように揺れている。影は青白く、形がはっきりしない。
彼女は微笑んでいた。 
「その なんとかさんは」 彼はいった。「どんな顔してるんだい?」
かすかな頬笑みが消え、小猿のようなしかめつらが彼女の顔にちらついた。
「そうね」 「彼、あなたに似ているわ。 わたしにも、ほかのみんなにも」

Their reflections, made them pale and incomplete. She was smiling.
" Mr. Whoozits,"  he said, "what does he look like ?"
The suggestion of a smile faded, a small monkeylike frown flickered on her face.
" Well, she sad quietly, " he looks like you, like me, like most anybody."


・・・・・・。

Here is a hall without exit, a tunnel without end.
Overhead, chandeliers sparkle, and wind-bent candles float on currents of air.
Before him is an old man rocking in a rocking chair, an old man with yellow-dyed hair, 
powdered cheeks, kewpie-doll lips: Vincent recognizes Vincent.
Go away, screams Vincent, the young and handsome, but Vincent, the old and horrid, 
creeps forward on all fours, and climbs spiderlike onto his back.
And so he races with his shadow.

ここは出口のないホール、終りのないトンネル。
頭の上にはシャンデリアがきらめき、風に揺れるろうそくの火が空気の流れに漂う。
彼の前にはロッキング・チェアに座った老人が身体を揺らしている。
黄色く染めた髪、白粉をつけた頬、キューピー人形のような唇。
ヴィンセントはその老人がヴィンセント自身であることに気づく。あっちに行け、と若くハンサムなヴィンセントがいう。
しかし年老いた醜いヴィンセントはよつんばいになって近づき、クモのように彼の背中によじのぼる。
脅したり、頼んだり、殴ったりしても、追い払うことが出来ない。そのため彼は自分の影と競争する。


All at once the tunnel seethes with men wearing white tie and tails,
women costumed in brocaded gowns.
The guests stand about in petrified pairs, and there is no conversation.
He notices then that many are also saddled with malevolent semblances of themselves,
outward embodiments of inner decay.

と、突然、トンネルは、白いネクタイと燕尾服の男たちや色とりどりのガウンを着た女たちであふれかえる。
客は二組になって、石のようにじっと立っている。話し声はまったくない。
彼はそのとき、客の多くも、自分自身の邪悪な分身を背中に背負っていることに気づく。
それは身体の内部の腐敗が外にあらわれたものだ。

A man is coming toward him, the host; he steps lightly, precisely in glace shoes;
one arm, held stiffly crooked, supports a massive headless hawk
whose talons, latched to the wrist, draw blood.

ひとりの男が彼に近づいてくる。 パーティーのホストだ。
彼は、ぴかぴかに光っている靴をはき、軽やかに歩いてくる。
片方の手は、固く肘を曲げ、そこに大きな、頭のない鷹をとまらせている。
鷹の爪はホストの手首にくいこんでいて、そこから血が流れ出ている。

He lifts a hand, and in a soprano voice announces: 
" Attention ! The dancing will commence."

ホストは片手をあげて、ソプラノの声でいう。
「お静かに! ダンスが始まります」。


A girl glides into Vincent's arms, and she too has a figure barnacled to her back,
an enchanting auburn-haired child; like an emblem of innocence, 
the child cuddles to her chest a snowball kitten.

ひとりの女の子が、ヴィンセントの腕にすべりこんでくる。
彼女の背中にも、しがみついている人間がいる。
魅力的な、赤褐色をした子供だ。その子供は、
無垢の象徴のように、胸に雪の玉のような子猫をだいている。


The instant their hands meet he begins to feel the weight upon him diminish;
the old Vincent is fading. His feet lift off the floor, he floats upward from her embrace.
He is rising high, and the white receding faces gleam below like mushrooms on a dark meadow.

彼女の手に触れた瞬間、彼は自分の上にかかった重みが消えていくのを感じ始める。
年とったヴィンセントの姿が消えてゆく。 彼の両足が床から上がり、
女の子の腕を抜けて上へ浮き上がっていく。
彼は高く上へ上へ上がっていく。 客の白い顔が遠去かっていき、
下のほうで、暗い牧草地のキノコのように光っている。



The host releases his hawk, sends it soaring.
 Vincent thinks, no matter, it is a blind thing, and the wicked are safe among the blind.
But the hawk wheels above him, swoops down, claws foremost; 
at last he knows there is to be no freedom.

ホストは鷹を放ち、高く舞い上がらせる。
ヴィンセントは、どうせ鷹は目が見えないのだから、怖いことなどないと考える。
邪悪な人間も 目が見えない人間のなかでは安全なのだ。
しかし、鷹は彼の頭上を旋回し、爪を立てながら、舞い降りてくる。
ついに彼は、自由になることなんて かなわないんだと知る。



つづく
to be continued later


やはり、どうしてもここで記しておこうと思います。

 私の本家ブログは、間違いだらけの英文と貧弱な日本語と素人写真で成り立っています。
それらはいずれも、何時までたっても私という小さな枠から一歩も出ることができず、
ここ 数か月は、その事をこれまで以上に苦痛に感じるようになりました。
これだけでを続けてはいけない、それはきっと今までの3年間の自分と現在の自分とに 何かズレを感じるからで、
それが何だかわかりませんが、ひとつ言える事は、中途半端な日本語、英語を一からやり直したい、
そういう想 いが大きくなった事です。 まさに、Let's start again from scratch !  
天才作家の英文と村上春樹ら人気作家の翻訳を通して できれば少しでも自分の枠を大きくしていきたい。
それがこのブログを始めた理由です。
そして、私のこのような取組が 「面白いから 続けてみたらいいのに」 と
そっと肩を押してくれた親友がいてくれた事に感謝しています。 
                                                               

2 件のコメント:

  1. Anzuさん、
    ブログを書くことは時には大きなストレスになると感じることがあります。 頭で考えたことがうまく表現できず、あーぁこんなはずではとため息が出てしまいます。

    私は、本を読むのは小さいころから好きだったはずなのに、気が付けば軽い短編集のようなものを好んで読むようになっていました。映画も夫婦そろって大好きなのですが、質の良い、ストーリーのある映画が少なく、アクション、コンピューターグラフィックの多い派手なものが目立ちます。

    このお話は映像化したら、どんなになるだろうと考えたりしています。進めば進むほど不思議な世界にどっぷりとつかってきます。

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  2. snowwhiteさん 正直な気持ちを教えて頂きありがとうございます。私だけでなく皆さん同じような複雑な気持ちを抱えながらブログを続けてられる事が解りました。人間は自分の想いを、音楽、絵画、小説、映画など自分の手の届く手段でひとつの形に残そうとするのですね。たと観覧者が自分ひとりだったとしても。 面白いですね。(*'-'*)

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